本学健康スポーツ学科西原 康行教授の著書『野球職人の魂-ブレないモノづくりのエートス-』が出版されました。
スポーツ社会学、スポーツ教育学、教師教育論、スポーツマネジメント論等を研究している西原教授に本書に関してお話を伺いましたのでご報告させていただきます。
■まずは本書の出版の経緯を教えてください。
私はスポーツ社会学が専門研究分野です。スポーツ社会学とは、スポーツの様々な現象から「現代社会」を考える学問です。例えば、最近の話題として東日本大震災で発生した原子力発電所の事故を例に挙げると、「技術への過信」「過剰な豊かさの享受」「メディア操作」「専門性(非常に細分化された見方)による大局性の欠如」「リーダーシップのあり方」等、様々な問題が浮かび上がってきます。こういった問題をスポーツの現象からとらえてみる、特に、野球というスポーツからそれが上手く浮かび上がってくると考えたからです。
また、私の祖父は教育哲学者だったのですが、幼少期から「権威、地位、名誉に縛られない『一兵卒』」であれ」と教えられてきました。さらに、大学・大学院の師匠からも偶然ですが、「一兵卒であれ」と教え込まれてきました。そういった影響もあってか、「上から目線ではなく、日常の目線から」「何事も勝者より敗者に心情移入してしまう」癖があり、あまり世の中で注目されず、ひっそりと田舎で野球用品を作る人々に着目してみようと思い、1年間野球用品の職人として住み込みで働いた内容から見える社会のあり方について、本として世に出そうと考えたためです。
■本書の概要について教えてください。
1年間、筆者が野球用品を作る職人のもとに住み込みで働いて描いたエスノグラフィから、現代社会のあり方を考える書籍です。
決められた時間の中で合理性が追求されるサッカー、合理的な動きが勝敗を左右する陸上競技や水泳は、いずれも日本社会の近代の大量生産、大量消費、合理性の追求と似ています。その一方で、野球は、投球時や攻守交代の「間」、大きさや形状の違う野球場というように、牧歌的であり、不合理であるが、人間臭さが漂うものです。また、野球グラブ、バットは職人の暗黙の知によって、手作業で作られます。工場の機械生産のように大量に同じものが作られるわけではありません。さらに、野球選手は、この職人の暗黙のレベルで作られるグラブやバットを見事に使いこなします。こういったことから現代社会の本当の幸せとは何かを考える内容になっています。
■本書の中で西原教授が最も伝えたい内容について教えてください。
本書で最も皆様にお伝えしたい内容は「真のプロフェッショナルとは、権威主義に陥らず、自分勝手に振舞わず、流行りのもの(研究)に一喜一憂せず、真摯にものごとや人に接することであり、それがこれからの社会を良い方向に導いていくであろうし、そういう人が真の幸せをつかむ」ということです。この点をぜひ皆様にお伝えできていれば幸いです。
□タイトル:野球職人の魂 -ブレないモノづくりのエートス-
□著者:西原康行
□出版社:新潟日報事業社 ISBN:9-784-86132-450-5
□定価:2,500円(税込)
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■健康スポーツ学科西原 康行教授のプロフィールはこちら
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