星 春輝先生(理学療法学科14期生、修士課程修了、TMGあさか医療センター)と大西秀明教授(理学療法学科、運動機能医科学研究所、神経生理Lab)の研究論文が『Behavioural Brain Research』に掲載されました。
経頭蓋ランダムノイズ刺激という刺激を用いて運動機能や脳の興奮性を変化させるタイミングについて検討した内容となっております。
[研究内容の概要]
非侵襲的脳刺激の1つである経頭蓋ランダムノイズ刺激(transcranial random noise stimulation:tRNS)は皮質脊髄路の興奮性を増大させるだけでなく、運動機能も向上させることが報告されています。
しかし、運動練習に対するtRNSの刺激タイミングが皮質脊髄路の興奮性と運動機能に及ぼす影響は明らかになっていません。そこで本研究では、運動練習に対して異なるタイミングでtRNSを実施し、tRNSの刺激タイミングの影響を調査しました。
本研究では4つの条件(①運動練習前にtRNSを実施、②運動練習中にtRNSを実施、③運動練習後にtRNSを実施、④運動練習のみ)を設定し、各条件で介入前後における皮質脊髄路の興奮性及び運動機能を評価しました。
その結果、条件①ではtRNS直後に皮質脊髄路の興奮性が増大し、運動練習直後にはtRNS直後よりもさらに皮質脊髄路の興奮性が増大しました。
条件②ではtRNS及び運動練習直後に皮質脊髄路の興奮性が増大しました。
条件③では運動練習直後と運動練習から10分後に皮質脊髄路の興奮性が増大しましたが、tRNS直後では運動練習直後の皮質脊髄路興奮性と比較して有意差を認めませんでした。
条件④では運動練習直後と運動練習から10分後に皮質脊髄路の興奮性が増大しました。
一方、運動機能に関しては、全ての条件で運動練習前よりも運動機能が向上しましたが、各条件間で運動練習後の運動機能には有意差を認めませんでした。
本研究の結果から、皮質脊髄路の興奮性はtRNSの刺激タイミングに依存して変化することが明らかになりました。
一方、tRNSの刺激タイミングの違いは運動学習に影響しないことが明らかになりました。
>>研究内容について詳しくはこちら
https://www.nuhw-pt.jp/2021/08/-20210803.html
[星先生からのコメント]
本研究で用いたtRNSは他の非侵襲的脳刺激と比較して歴史が浅く、その効果や有効性に関してはまだ明らかになっていない点が多くあります。
本研究ではtRNSの刺激タイミングに依存して皮質脊髄路興奮性は変化するものの、運動学習には影響を及ぼさないことが明らかになりました。一方で、tRNSは刺激強度や刺激周波数、刺激時間など様々な要因によって皮質脊髄路に及ぼす影響が異なることも報告されているため、今後はこれらの要因を考慮した上で、運動機能を向上させるための効果的な刺激方法の解明に努めたいと考えます。
[原著論文情報]
Hoshi H, Kojima S, Otsuru N, Onishi H. Effects of transcranial random noise stimulation timing on corticospinal excitability and motor function. Behavioural Brain Research,Volume 414, 2021.
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