新潟医療福祉大学大学院医療福祉学研究科の孫順翔さん(作業療法学分野)と作業療法学科の能村友紀教授は、脳への微弱な電気刺激が記憶力の活性化に寄与する可能性を示す研究成果を発表しました。本研究は、特に認知症患者への応用が期待されています。記憶力の低下は加齢とともに顕著になり、特に認知症患者においては日常生活の質(QOL)に大きな影響を及ぼします。近年、経頭蓋交流電気刺激(tACS)が神経活動を調節する可能性が注目されており、この技術が記憶機能にどのように寄与するかを検討しました。
この論文は、国際誌『Experimental Brain Research』に掲載されました。
【研究のポイント】
・認知症患者は今後さらに増加する見込みである
・高齢者や認知症患者では、記憶力の低下が顕著にみられる
・認知症患者の記憶力を改善する有効な手段は、現在のところ確立されていない
【研究方法と結果】
◆方法:本研究では、健常成人を対象に経頭蓋交流電気刺激(tACS)を用いた実験を行った。
・対象者:健常成人28名
・刺激方法:左後頭頂皮質領域に対し、60HzのtACSを1.5mAの微弱な電流で刺激
・介入期間:1回8分間の電気刺激を単語学習時に3回実施
・評価方法:単語再認課題を用い、電気刺激後の長期記憶パフォーマンスを比較
◆結果:経頭蓋交流電気刺激(tACS)を受けた群は、対照群と比較して、7日後および28日後の単語再認課題における正答率が有意に保持されていた。本研究の成果は、電気刺激を用いた記憶力の活性化の可能性を示しており、長期記憶の改善につながることを示唆している。今後、認知症リハビリテーションや治療法の開発への貢献が期待される。
【研究者のコメント】
◆孫順翔さん(写真左)
電気刺激を用いた認知機能改善のメカニズムを解明し、より多くの人々の役に立つ研究を続けていきたいと考えています。
◆能村友紀教授(写真右)
本研究の成果が、将来的に認知症の予防や治療の選択肢の一つとなることを期待しています。今後も研究を進め、より実用的なアプローチの確立を目指したいと考えています。
【研究助成】
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) (研究代表者:能村友紀)
【原論文情報】
論文名:Shunxiang Sun, Hiroki Annaka, Tomonori Nomura. Gamma-frequency transcranial alternating current stimulation over the left posterior parietal cortex enhances the long-term retention of associative memory. Experimental Brain Research. 243, 62 (2025). https://doi.org/10.1007/s00221-025-07009-8
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