特色
大学概要
学部・学科
キャンパスライフ
就職・資格
入試情報

TOPICS

磁石が脳機能を変化させるメカニズムを解明! 脳卒中や神経難病のリハビリテーションへの応用に期待!

2024.03.04 プレスリリース

平素より格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。

新潟医療福祉大学リハビリテーション学部の芝田純也教授、浜松医科大学医学部の福田敦夫特命研究教授、中部大学生命健康科学部の高松泰行准教授、立命館大学大学院先端総合学術研究科の美馬達哉教授らのグループは、永久磁石が脳機能を変化させる仕組みを細胞レベルで明らかにしました。
本研究では、マウスの脳細胞を磁石で刺激し、その後の脳細胞の活動について測定しました。その結果、磁気が細胞の膜に存在する塩素イオン(Cl-)チャネルの活動を変化させ、脳の働きを抑えることを世界で初めて発見しました。これにより、脳卒中や神経難病に苦しむ多くの人々の福音となる、磁石を使ったリハビリテーションや塩素イオン(Cl-)チャネルにターゲットを絞った新規医薬品開発に応用されることが期待されます。
本研究成果は、2024年2月28日に国際専門誌「Journal of Neuroscience」に掲載されました。

つきましては、ぜひ取材・報道くださいますようお願いいたします。取材をご希望の場合は、お手数ですが、以下の問い合わせ先までご連絡ください。

研究の概要
【背景】経頭蓋静磁場刺激(tSMS、写真)は、磁石を使って安全にかつ簡単に脳の働きを変えることができる非侵襲的な脳刺激法で現在研究が進められています。これまでに、tSMSを用いた脳卒中のリハビリテーションにおいて、上肢の動きを改善させる効果が認められており、脳卒中や神経難病のリハビリテーションへの応用が期待されています。しかしながら、tSMSの磁石が脳に作用するメカニズムについてはこれまで明らかにされていませんでした。

【方法】生後21-27日のマウスからとった脳の一部を、磁石を用い300mTの強さで30分間刺激しました。刺激した後の脳細胞の興奮性を、パッチクランプ法(細いガラス管を1個の細胞の膜に密着させて細胞の電気信号を測り、その細胞がどれだけ興奮しているかを調べる方法)を用いて刺激をしていない脳細胞と比較しました。

【結果】磁石で刺激することで、脳細胞を興奮させるために約1.7倍の電流が必要になりました。磁石を取り除いた後、10分後には刺激前の状態に戻りました。つまり、脳細胞が一時的に興奮しにくい状態になり、脳細胞が興奮する回数も一時的に50%以上減少することがわかりました(下図)。また、それに伴い脳細胞が一時的に1.4倍に膨らむことも観察されました。Cl-チャネルの働きを抑える薬剤を用いたところ、それらの現象が消失したため、磁石はCl-チャネルの働きを変化させて脳細胞の働きを抑えていることがわかりました。脳細胞にはいろいろな種類のCl-チャネルが存在しますが、特にSLC26ファミリーに属するCl-チャネルの関与が示唆されました。SLC26ファミリーは脳以外にも腎臓や心臓などいろいろな臓器の中の細胞に存在しており、それらの細胞の内外に物質を輸送する役割を持っています。

【本研究のポイント】
・磁石を頭において脳の働きを変化させるtSMSは、新しいリハビリテーションの方法として期待されています。
・磁石がどのように脳細胞に作用するかを調べるため、磁石でマウスからとった脳の一部を刺激し、脳細胞の活動を細胞レベルで詳細に調べました。
・磁石で刺激すると、脳細胞は一時的に膨らみ、その興奮性が減少しました。Cl-チャネルの働きが磁石により変化したことが原因であることが分かりました。
・磁石が脳細胞に作用するメカニズムが解明されたため、磁石を用いたリハビリテーションの開発が本格的に進むことが期待されます。
・本研究が明らかにした磁石が作用するCl-チャネルは脳の働きを変化させることができるため、そのCl-チャネルをターゲットにした新規薬剤の開発も期待されます。

【研究助成】
本研究は文部科学省・日本学術振興会科学研究補助金(JSPS科研費 15H05872、18K17739、19H01091、21H05687、21K17671、21K19745、22H04788)による助成を受けて行われました。
【論文情報】
論文名:Static magnetic field stimulation enhances shunting inhibition via a SLC26 family Cl− channel, inducing intrinsic plasticity
著者:*Adya saran Sinha1)、*芝田純也2)3)、*高松泰行4)、秋田天平1)、福田敦夫1)、§美馬達哉5)
1)浜松医科大学医学部、2)新潟医療福祉大学リハビリテーション学部、3)新潟医療福祉大学運動機能医科学研究所、4)北海道大学大学院保健科学研究院(現在は中部大学生命健康科学部)、5)立命館大学大学院先端総合学術研究科   (*:筆頭著者、§:責任著者)
掲載誌:Journal of Neuroscience
DOI:https://doi.org/10.1523/JNEUROSCI.1324-22.2024

【お問い合わせ先】
●新潟医療福祉大学
住所:新潟県新潟市北区島見町1398番地
TEL:025-257-4459
E-mail:kouhou@nuhw.ac.jp
担当:入試広報部 広報課 石津

●浜松医科大学
住所:静岡県浜松市中央区半田山一丁目20番1号
TEL:053-435-2151
E-mail:koho@hama-med.ac.jp
担当:総務課 広報室 武田

●中部大学
住所:愛知県春日井市松本町1200番地
TEL:0568-51-7638(直通)
E-mail:cuinfo@office.chubu.ac.jp
担当:学園広報部 広報課

●立命館大学
住所:京都府京都市中京区西ノ京朱雀町1
TEL:075-813-8300
E-mail:r-koho@st.ritsumei.ac.jp
担当:総合企画部 広報課 池田